Il faut cultiver notre jardin

フランス近世史・革命史・フリーメイソン史研究に関するブログです。新刊情報などをまとめています。

[新刊]2019年3月

[新刊]2019年1月

  • 松浦義弘「フランス革命をどう考えればよいのか : 拙著に関する服部春彦氏の批判をふまえて」『史学雑誌』128(1)、2019年、53-64頁。
  • ミシェル・ヴォヴェル(立川孝一・瓜生洋一訳)『死とは何か (上)一三〇〇年から現在まで』藤原書店、2019年1月25日発売予定
  • ジョン・ロバートソン(林直樹・野原慎司訳)『啓蒙とはなにか 忘却された〈光〉の哲学』白水社、2019年2月。
  • 社会思想史学会編『社会思想史事典』丸善出版、2019年1月。

[新刊]2018年9-12月

  • 小笠原弘幸『オスマン帝国』中公新書、2018年12月。
  • 小田中直樹『フランス現代史』岩波新書、2018年11月予定。
  • 上條敏子「女性の身体 : フランスの女性史研究の歩みとダンの近著にみる歴史学の最前線」『歴史評論』(824)、2018年、72-83頁。
  • 桑木野幸司『記憶術全史 ムネモシュネの饗宴』講談社選書メチエ、2018年12月予定。
  • 近藤和彦『近世ヨーロッパ』山川出版社、2018年12月予定。
  • 坂野正則「近世フランスの植民都市とカリブ海域 : アンティル諸島とミシシッピ・デルタをつなぐ「都市と領域」」『都市史研究』5号、2018年、76-84頁。
  • 坂野正則「『ルイ14世の死』再考: 300周年記念事業と映画制作を越えて」『上智史学』 (63)、 2018年11月、123-139 頁。
  • 坂野正則「フランス初期宗教改革再考 : 改革・教会・信仰 」『キリスト教史学』(72)、2018年、44-52頁。
  • 薩摩真介『<海賊>の大英帝国』講談社選書メチエ、2018年11月予定。
  • 佐藤彰一『宣教のヨーロッパ 大航海時代のイエズス会と托鉢修道会』 中公新書、2018年11月予定。
  • 平正人「フランス革命を生きた新聞記者カミーユ・デムーラン」『史潮』新84号、2018年、141-164頁。
  • 玉木俊明『拡大するヨーロッパ世界 1415-1914』知泉書館、2018年11月20日。
  • 中嶋洋平『サン=シモンとは何者か――科学、産業、そしてヨーロッパ』吉田書店、2018年12月20日刊行予定。
  • 見瀬悠「十八世紀フランスにおける外国人遺産取得権―パリ・サン=ジェルマン=デ=プレ地区の事例からー」『史学雑誌』 127(9)、2018年、1-35頁。
  • 山内邦雄「十六世紀前半におけるフランス王国財政の転機 : 財務官僚ジャック・ドゥ・ボーヌの事例を通して」三田史学会『史學』87(4)、 2018年、473-516頁。
  • 山﨑耕一『フランス革命 「共和国」の誕生』刀水書房、2018年10月。
  • 山中聡「フランス総裁政府期の国民祭典」『西洋史学』265号、2018年、22-38頁。
  • ユルゲン・コッカ(山井敏章訳)『資本主義の歴史 起源・拡大・現在』人文書院、2018年12月。
  • アラン・コルバン(小倉孝誠、中川真知子訳)『静寂と沈黙の歴史 ルネサンスから現代まで』藤原書店、2018年11月。
  • ゼバスティアン・コンラート(浅田進史訳)「グローバル・ヒストリーのなかの啓蒙(下)」『思想』 (1134)、2018年10月、93-115頁。
  • ウィリアム・バンガート『イエズス会の歴史(上)・(下)』中公文庫、2018年9月。
  • C. A. ベイリ(平田雅博・吉田正広・細川道久訳)『近代世界の誕生(下巻)グローバルな連関と比較1780-1914』名古屋大学出版会、2018年。
  • ウーテ・フレーフェルト(櫻井文子訳)『歴史の中の感情 失われた名誉/創られた共感』東京外国語大学出版会、2018年11月。
  • アントワーヌ・リルティ(松村博史・井上櫻子・齋藤山人訳)『セレブの誕生 「著名人」の出現と近代社会』名古屋大学出版会、2018年。

2018年6-8月

  • アラン・コルバン(山田登世子、小倉孝誠訳)『処女崇拝の系譜』藤原書店、2018年
  • アン・ブレア(住本規子、廣田篤彦、正岡和恵訳)『情報爆発-初期近代ヨーロッパの情報管理術』中央公論新社、2018年8月17日予定。
  • アンリ・ピレンヌ(佐々木克己訳)『中世都市 社会経済史的試論』ちくま学芸文庫、2018年9月予定。
  • 金澤周作「(西洋史読書会シンポジウム)西洋史における時代区分をめぐって」『フェネストラ : 京大西洋史学報』1、2018年、22-23頁。
  • 坂野正則「フランス初期宗教改革再考 : 改革・教会・信仰 (宗教改革500年記念特集) (第68回キリスト教史学会大会)」『キリスト教史学』72、 2018年、44-52頁。
  • 西願 広望「フランス革命期の植民地主義者 : 事例研究マルエとバルベ=マルボワ」『日仏歴史学会会報』 33、2018年、 3-17頁。
  • 服部春彦「<論説・動向>フランス革命・ナポレオン期ヨーロッパにおける美術品の移動とその影響」『フェネストラ : 京大西洋史学報』 1、2018年、1-3頁

2018年4-5月

  • 大平章『ノルベルト・エリアスの全体像 フィギュレーション理論の探究』成文堂、2018年5月。
  • 坂倉裕治 ・隠岐さや香 ・松波京子 「名古屋大学所蔵『エミール』パリ版初版本について」『名古屋大学附属図書館研究年報』15、2018年3月31日、13-17頁。
  • 上田泰史『パリのサロンと音楽家たち 19世紀の社交界への誘い』カワイ出版、2018年4月。
  • 加藤節『ジョン・ロック 神と人間との間』岩波新書、2018年5月。
  • 菊池雄太「ハンザ商人の事業組織をめぐってーネットワーク論と制度論の限界と可能性ー」『歴史と経済』
  • パトリス・ゲニフェイ編( 神田順子・谷口きみ子訳)『王たちの最期の日々』(上・下)原書房、2018年。
  • アルフレート・ハーフェルカンプ(大貫俊夫ほか訳)『中世共同体論 ヨーロッパ社会の都市・共同体・ユダヤ人』柏書房、2018年5月。
  • デイヴィッド・ベル(桑子亮ほか訳)「トゥサン・ルヴェルチュール、ハイチ革命、グローバルな啓蒙」『クリオ』32号、2018年。
  • 東出 加奈子『海港パリの近代史:セーヌ河水運と港』晃洋書房、2018年。

[新刊]2018年3月

  • 安藤祐介「18世紀フランスにおける統治改革と中国情報 : フィジオクラットからイデオローグまで」『立教法学』98、2018年、1-19頁。
  • ジュヌヴィエーヴ アルティガス=ムナン「18世紀の小説と思想論争」首都大学東京人文科学研究科人文学報編集委員会『人文学報, フランス文学』514(15)、2018年、11-30頁。
  • 榎本 恵子「ヘラクレスに象徴されるルイ14世」首都大学東京人文科学研究科 人文学報編集委員会『人文学報, フランス文学』514(15)、2018年、309-325頁。
  • 岡村等「フランス革命期における反結社法の役割に関する研究(2・完)」『早稻田法学会誌』 68(2)、2018年、53-108頁。
  • 伊達聖伸『ライシテから読む現代フランス:政治と宗教のいま』岩波新書、2018年3月。
  • 剣持久木編『越境する歴史認識 ヨーロッパにおける「公共史」の試み』岩波書店、2018年3月。
  • 空由佳子「啓蒙期フランスにおける自由主義的な改革と地域社会:ボルドー地方長官区の事例」『東洋大学人間科学総合研究所紀要』20号、2018年、113-128頁。
  • 竹中幸史「空間の脱宗教化と世俗化ーフランス革命期の地名変更」『東欧史研究』40、 2018年3月、153-164頁。
  • 田中大二郎「フランス近代思想における習俗と自然法 : ジャン・バルベイラックの「習俗に関する学science des moeurs」」『一橋大学社会科学古典資料センター年報』38、2018年、1-15頁。
  • 仲松優子「フランス革命前後の主権のあり方を考える―歴史学からのアプローチ―」( 佐藤貴史・仲松優子・村中亮夫編『はじめての人文学―文化を学ぶ、世界と繋がる―』知泉書館 2018年3月)
  • 長谷川まゆ帆『近世フランスの法と身体:教区の女たちが産婆を選ぶ』東京大学出版会、2018年3月。
  • 逸見龍生編『百科全書の時空:典拠・生成・転位』法政大学出版局、2018年3月。
  • 松浦義弘『ロベスピエール:世論を支配した革命家』山川出版社、2018年3月。
  • 森原隆編『ヨーロッパの政治文化史 統合・分裂・戦争』成文堂、2018年3月。
  • エマニュエル・ド ヴァレスキエル(土居佳代子訳)『マリー・アントワネットの最期の日々』上・下、原書房、2018年。

ラインアルター『フリーメイソンの歴史と思想』について(4)

今回は、ラインアルター『フリーメイソンの歴史と思想』第4章の冒頭、74頁左段『旧き義務」第二条の訳について、問題点が多いと思われるため、私なりに訳し直してみたいと思います。なお、ラインアルターは、本書で一貫して1723年の『旧き義務』(中世石工の規範文書Old Chargesは『古来の義務』とも訳されます)と記していますが、正確には1723年に出版された『アンダーソン憲章』に収められた『フリーメイソンの義務』です。アンダーソンは収集した『古来の義務』にもとづいてこの『義務』を作成したと主張していますが。
第二条「上級・下級の統治者について(II. Of the CIVIL MAGISTRATE supreme and subordinate)」について、訳者による訳文は、以下になります。

フリーメイソンは自らが住み働いている場所の市民権力の忠実な臣民であり、市民の平和と安寧に対する謀反や陰謀にかかわってはならないし、支配当局の命に反する行動をおこなってはならない。というのは戦争や流血事件、不穏はフリーメイソンにとっては常に不利に作用するからである。つまり古来より国王や領主たちは、キルド成員の静穏と市民的忠実を奨励し、敵対者の苦言に対処し、同胞愛の栄誉を促進しようとしているからである。そしてそれは平和時に栄えるからである。

『フリーメイソンの義務』の英語原文では、以下のように記されています。

A Mason is a peaceable Subject to the Civil Powers, wherever he resides or works, and is never to be concern’d in Plots and Conspiracies against the Peace and Welfare of the Nation, nor to behave himself undutiful to inferior Magistrates
; for as Masonry hath been always injured by War, Bloodshed, and Confusion, so ancient Kings and Princes have been much dispos’d to encourage the Craftsmen, because of their Peaceableness and Loyalty, whereby they practically answer’d the Cavils of their Adversaries, and promoted the Honour of the Fraternity, who ever flourish’d in Times of Peace.

私が訳すならば、つぎのようになります。

メイソンはどこに居住しどこで作業しようとも、統治権力に服する平和的臣民であり、国民の平穏と福祉に対する陰謀や謀議に決して関与すべきではなく、下級行政官に対しても不従順にふるまうべきではない。というのも、メイソン団はつねに戦争、流血、混乱に害されてきたからであり、また、古来、諸王と諸侯は、職人[メイソン]たちを彼らの平穏さと忠誠ゆえに奨励しようとしてきたためである。彼ら[メイソンたち]は、これ[平穏さと忠誠]によって、彼らの敵対者によるあら探しに実質的に応答し、つねに平和な時代に栄えた友愛団の名誉を高めてきたのである*1

急ぎで訳しましたので、何かご指摘などがございましたら、よろしくお願いします。

関連記事
ラインアルター『フリーメイソンの歴史と思想』について(1) - Il faut cultiver notre jardin
ラインアルター『フリーメイソンの歴史と思想』について(2) - Il faut cultiver notre jardin
ラインアルター『フリーメイソンの歴史と思想』について(3) - Il faut cultiver notre jardin

*1:1文目のみ、深沢克己先生による訳を採用しました。深沢克己「一八世紀フランスのフリーメイソンと寛容思想」深沢克己・高山博編『信仰と他者 寛容と不寛容のヨーロッパ宗教社会史』東大出版会、2006年、230頁。