Il faut cultiver notre jardin

近世フランス史・フリーメイソン史研究に関するブログです。新刊情報などをまとめています。

ラインアルター『フリーメイソンの歴史と思想』について(1)

遅ればせながら、ヘルムート・ラインアルター(増谷英樹・上村敏郎訳)『フリーメイソンの歴史と思想:「陰謀論」批判の本格的研究』(三和書籍、2016年)を落手し、読み進めています。インスブルック大学の元教授で、ドイツ語圏フリーメイソン研究の大家である著者の手による概説です。入門書とはいえ、かなり難解な本ですので、深沢克己氏による諸論文などと一緒に、読まれるとよいのではないかと思います*1。ここでは、読んでいて気になった誤字脱字や用語の表記について、備忘録代わりにまとめておきます。ひとまず、第二章までです。本来であれば、ドイツ語の原文を参照してからブログ記事として公表すべきところですが、ご容赦ください。2016年5月に出版された第一版第一刷を元にしています。

序文
  • 2頁の訳者註解(1)に登場する「ロジェ」は、ドイツ語表記のままですので、凡例(iv頁)に従って「ロッジ」という表記に統一すべきと思われます。
第一章
  • 4頁右段「ピタゴラス派同盟」は、「ピタゴラス教団」が一般的でしょうか。
  • 6頁左段(下から五行目)、Die Entwicklung der Freimaurereiのrが抜けています。この文献の出版年も記してほしかったです。
  • 6頁右段「大組合長」は、原著の記述を確認しておりませんが、凡例(iv頁)に従って「大親方」と統一すべきでしょうか。
  • 8頁右段「デザグリュエ」は、「デザギュリエ」ですね。
  • 8頁右段「シュヴァリエ・ドゥ・ラムジー」は、『百科全書』の執筆者としてよく知られる「ジョクール騎士」と同様に、「ラムジー騎士」と記すべきではないでしょうか。9頁左段(二行目)の「シュヴァリエ」は、名字のように読めてしまいますので、「騎士」とするか、分かりやすく「ラムジー」としてしまってもいいかもしれません。
  • 10頁右段(3-4行目)の「聖マルティネス的リヨンシステム」は、訳の難しい箇所ではありますが、ルイ・クロード・ド・サンマルタンはキリスト教の聖人ではありませんので、「聖」と漢字にすべきではないと思います。「サンマルタン的」あたりが妥当でしょうか。ちなみ、リヨンの絹織物商Jean-Baptiste Willermozによるメイソン改革運動の位階・儀礼・組織構成の総体を指していると思われます。この商人については、深沢克己先生が論文で紹介されていますね。
  • 13頁「フランス革命とフリーメイソン」解説文中5行目にある「1779年のバルエルの著作」は、「1797年のバリュエルの著作」ですね。86頁右段では正確に表記されています。
  • 16頁右段、「1799年のフランスの『大東社』の設立と古式公認スコットランド儀礼の短期間の取り入れは、フリーメイソンの活動の政治とのかかわりや政治家たちとの結びつきを急速に制限した」という一文についてですが、本書で「フランスの大東社」と訳されているフランスのフリーメイソン統轄団体le Grand Orient de Franceの設立は1773年ですが、ここの段落は19世紀に関する記述にあてられていますので、年号が間違っているのでしょうか。また、31頁左段等にも登場する「古式公認スコットランド儀礼」ですが、深沢克己先生は、「古式受容スコットランド儀礼」と訳しておられますね。
  • 16頁右段(最終行)のドイツ語文献Dieter A. Binder, Die Freimaurerのrが抜けています。また、Dieter A. Binderには、Die Freimaurerというタイトルの著作が複数存在するみたいですので、副題か出版年を記してもらえるとありがたかったです。
第二章
  • 38頁左段二行目や42頁訳者註解(6)の「コンタ・ヴェネッサン」は、「ブナスク伯領」という訳語が一般的かと思われます。

12月20日追記。続きです。
ラインアルター『フリーメイソンの歴史と思想』について(2) - Il faut cultiver notre jardin