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Il faut cultiver notre jardin

近世フランス史研究に関するブログです。新刊情報などをまとめています。

[時事]フランスのフリーメイソン団体が大統領選を前に異例の声明

2017年4月13日、フランスの七つのフリーメイソン統轄団体が、十日後に予定されているフランス大統領選の第一回投票をまえに、極右政党「国民戦線(FN)」が擁立する候補者マリーヌ・ルペンに投票しないよう呼びかけるという、異例の共同声明を発表しました。
以下、主にリベラシオン誌の記事に依拠しながら、簡単に概要を紹介したいと思います*1

この声明に署名した統轄団体は、フランス大東方会(Grand Orient de France)、フランス人権連盟(Fédération française du Droit humain)、フランス女性大会所(Grande Loge féminine de France GLFF)、メンフィス・ミスライム女性大会所(Grande Loge féminine de Memphis Misraïm)、フランス男女混成大会所(la Grande Loge mixte de France)、世界男女混成大会所(Grande Loge mixte universelle)、諸文化と精神性大会所(la Grande Loge des cultures et de la spiritualité)です*2
これら七つの統轄団体は、現在、およそ12万の会員を擁しており、これはフランスのフリーメイソン人口の半分か、それ以上にあたるといわれています*3

今回出された声明は、人種差別や排外主義といった「他者への憎悪」を掻き立てるFNのこれ以上の台頭を防ぐために、普遍的な人類愛を理想として掲げるフリーメイソン団の立場を確認しながら、共和国の創立理念と共生の価値を思い起こさせ、責任ある投票行動を促す目的で発表されたようです。声明は、各団体に所属するメイソン会員の投票行動を拘束するものではないみたいですが、実際にメイソンの投票にどれくらいの影響力があるのでしょうか。また、社会の側は、フリーメイソンのこうした声明をどう受け止めるのでしょうか。気になるところです。
ちなみに、七つの団体のなかには、政治的中立の原則を例外的に破ってまで声明に参加した団体もありますが、これをきっかけに公的な政治的論争に介入するつもりはないようです。

それにしても混迷を極めるフランス大統領選、どのような結果になるのでしょうか。

追記
フランス大東方会の公式ウェブサイトでの記事です。
GODF - Grand Orient de France - Sept Obédiences maçonniques lancent un Appel Républicain pour les élections présidentielles - 13 avril 2017

4月23日の第一回投票の結果を受け、フランス大東方会は、エマニュエル・マクロンへの投票を呼びかけました。
GODF - Grand Orient de France - Communiqué du 24 avril 2017 - Le Grand Orient de France appelle à faire barrage à l'extrême droite

関連記事
フランソワ・オランド大統領のフリーメイソン生誕300周年記念式典への出席 - Il faut cultiver notre jardin

*1:Les francs-maçons lancent un appel républicain... anti-FN - Libération

*2:日本におけるフリーメイソン史研究の第一人者である深沢克己氏に従い、ロッジを「会所」と訳していますが、これらの団体名の訳にはブログ著者の試訳が含まれます。フリーメイソン用語の訳については、ピエール=イヴ・ボルペール『「啓蒙の世紀」のフリーメイソン』(深沢克己編訳、山川出版社、2009年)収録の用語集を参照しました。

*3:ちなみにリベラシオンは12万でしたが、その他の新聞ではおよそ9万とする記事が多いようでした