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Il faut cultiver notre jardin

近世フランス史研究に関するブログです。新刊情報などをまとめています。

【紹介】前田「19世紀前半フランスにおける初等学校と博愛主義者たち」

前田更子「19世紀前半フランスにおける初等学校と博愛主義者たち-パリ,リヨンの基礎教育協会をめぐって-」『明治大学人文科学研究所紀要』第70冊、2012年3月、125-150頁。http://ci.nii.ac.jp/naid/120005258263

 復古王政期フランスにおいて民衆教育の普及に取り組んだのは、世俗の結社「基礎教育協会」である。この団体はイギリス流の「相互教授法」をフランス教育に導入することを目的として1815年にパリに設立されると、地方の主要都市に支部を展開しながら、6年間でフランス全土に1200の「相互学校」を開設させた。フランスにおける初等学校教育網の基礎を築いた団体であると言える。
 本論文は、リヨンの事例をとりあげながら、初等学校開設の経緯と創立に関わった人々の活動とネットワークを明らかにするものである。その際、19世紀フランスの初等教育を専ら国家事業として捉え、国家の政策や法制度の確立とその歴史的意義のみを強調する国家主義的・共和主義的な観点を採用することはしない。著者は、教育行政に関わる官僚や地方当局といった公的アクターのみならず、地域社会の独自の文脈の中で様々な結社・団体の活動を視野に収めることで、初等教育が名士=博愛主義者の事業でもあったことを明らかにする。また、国家主義・共和主義的な教育史においては、旧体制期から初等教育を担ってきたカトリック教会は、新しい初等教育の形成に抵抗する主体と見なされてきたが、本論文は、初等教育推進者が抱いていたカトリック教会や修道会系学校に対する認識を分析することで、こうした対立の構図にニュアンスを与えてくれる。

目次
はじめに
第1章 パリの基礎教育協会と博愛主義者たち
  第1節 基礎教育教会の設立
  第2節 基礎教育協会に集う人々
  第3節 基礎教育協会が支持された理由
  第4節 政府・ユニヴェルシテの初等教育政策と基礎教育協会
第2章 リヨンの相互学校とその創設者、支援者たち
  第1節 知事のイニチアチヴ
  第2節 地元のプロテスタント卸売・貿易商の働きとモデル校の設立
  第3節 リヨンの相互学校
  第4節 低迷、そして復調へ―ローヌ県基礎教育協会としての再出発―
おわりに 

関連文献
前田更子『私立学校からみる近代フランス―19世紀リヨンのエリート教育―』昭和堂、2009年